春告小町 / 山口美由紀
「春告小町」
♪作者 : 山口美由紀
♪完結済・全4巻
♪キーワード: 歴史、江戸、恋愛、ハートフル
*あらすじ*
団子屋の看板娘・【お春】は大のお侍嫌い。そんなお春の長屋に【坂崎正之助】という浪人が越してきた。人の「心の声」が聞こえるという、不思議な力を持つ正之助。その侍らしからぬ飾り気のない人柄に、お春は次第に心を開いていく……。花のお江戸のあったか純情ストーリー!
*レビュー(ネタバレあり)*
ほのぼのお江戸ストーリー…
かと思いきや、恋愛あり、戦いあり、非恋あり…と中々色んな要素があり、読み応えがかる作品です。
前半は、純粋で真っ直ぐなお春ちゃんと、一見飄々としてるのに闇を抱えてる正之助がお互いに惹かれていき、紆余曲折を経ながらも結ばれるまでのあったかストーリー。
が…後半は一転、特殊な"耳"を持つが故に血生臭い因縁に巻き込まれていく…少しヘビィなストーリー仕立てとなっています。
とはいえ、主人公のお春ちゃんが本当に真っ直ぐなので、そこまで重い気持ちにはなりません。
お春ちゃんはとにかく元気で真っ直ぐな女の子ですが、嫌みがない感じで好感がもてます。
そして、結構な頻度で挟まれるギャグシーンがいい効果を出しています。
心の声が聞こえるという能力が鍵となりますが、その辺の設定もしっかりしているので、違和感なく読み進めることができました。
"子供"と時間軸を上手く設定したラストの展開は正に圧巻。
「もうちょっとだけ頑張ってみようかな」
「生きていってみようかな」
という子旦那のセリフには感動。本当に幸せになってくれて良かった。
胸が温かくなり、ほろりときます。
凄惨な過去をもつ正之助が中々自分の気持ち・幸せを受け入れることができないところも切ないですし、
そんな正之助に対し、恋する乙女モード全快なお春ちゃんも可愛すぎます。
「心の声が聞こえてしまう力」ということで、人の醜い部分や、弱い部分…
はたまた温かい心や強さ、色んなものが交差して人間は生きているのだと、色々考えさせられる作品でもありました。
とても一生懸命で、しかしお互いに不器用な二人の恋は、見ていて応援したくなりまさす。
最後のいちゃいちゃ振りなんかもう…にやけるしかありません(笑)
絵柄は表紙画像だけでもわかる通りとても綺麗です。
また、漫画の世界では有りがちな"なんちゃって江戸"ではなく、しっかりとした時代考証に基づいて書かれており、そこはやはり流石ベテラン作家の山口先生だなと感じました。
何より山口先生の描く着流しのラインの美しさと言ったら…!
最高です!(笑)
読み込ませる、泣かせる、笑わせる!
三拍子揃ったとてもうまくまとまった作品だと思います。
全4巻ですが、とても読み応えありますので、じっくり作品の世界に浸りたい方にもオススメ!