風のたてがみ / 穂実あゆこ
「風のたてがみ」
♪作者:穂実あゆこ
♪完結済み・全6巻
♪キーワード:狼、変身、切ない、ファンタジー
*あらすじ*
動物研究所の中で、仲の良い兄妹のように育った【蒼(そう)】と【羽純(はずみ)】。
アイススケートが得意な蒼と、人形が好きな羽純は、平凡ながら幸せな日々を過ごしていた。
だが、ある晩に蒼の瞳が得体の知れない光を宿し、研究所で飼育されていた犬たちが突然暴れ出す。
その騒ぎの中で蒼は行方不明になり、羽純の父親は命を落としてしまった。
それから4年、高校生になった羽純は雑誌記事でフィギュアスケートの新鋭「佐野夢解(さのゆめとき)」の顔写真を見つけた。
その顔、その眼差しは探していた蒼とうりふたつ。なぜ、あの時姿を消したのか。どうして、別の名前で生きているのか。
謎を解くべく、羽純は人形師からもらった不思議なキツネ型パペットと一緒に、運命が待つ東京へと向かった……。
*レビュー(ネタバレあり)*
狼に変身する少年のお話。
サスペンスもの?ということでジャンル付けされているようですが、決して難解なストーリーではありません。
ひとつひとつ核心に近づいていくという意味ではサスペンス・ミステリーものに近いものはあります。
キャラクターが魅力的!
自分の中の獣をコントロールできない苦悩、運命を受け入れて、そして抗っていく蒼。
そしてそれを支え続ける羽澄の強さ。
黙っていても離れていてもお互いに理解しあっているというか…最後まで一貫して二人の心の絆が揺らぎないです。
残酷な現実に切なくなって、
本当に幸せになってほしいこの二人…!と何度胸が締め付けられたことか…。
絵柄は一世代程前の少女漫画といったところ。
キャラクターの表情や視線(目力?)の描写が丁寧だと思います。
変身ものでありがちですが、狼から人間に戻ったときは基本的にオールヌード(笑)
美少年のオールヌードがこんなに沢山拝める少女漫画…(笑)
……とは言っても、大体シリアスシーンですし、変なこと考えている場合じゃありません。
個人的な名シーンとしては、最終巻、最後の戦いの前の蒼の電話。
「あんたのそばにいたい
あんたが大事だ
他の誰より何より
――好きだ」
そういえばずっと当たり前にカップルみたいだったから忘れてたけど、ここまでどっちからも好きだって言ってなかったし、くっついてもなかったのよね…!
なのに今まで散々周りからも恋人扱いされてなんの否定もしてこなかったお二人…(笑)
最後の最後にして…!といったところです。
最後のほうはかなり駆け足で、なんとなく消化不良みたいな感じはありますが、
伏線も綺麗に回収してますし、一応ハッピーエンドなので良かったかなと思います。
できればもう少し続きが読みたかったけれど…
打ちきり?だったのでしょうか…。
最後の敵だった篁(たかむら)に関してももう少し掘り下げて欲しかったですね。
本人のセリフから、どうして石が欲しいのかとか目的はわかりましたが、
結局彼は何者なのか…もう少し彼のストーリーが欲しかった。
あとは、個人的に流くんがとても好きでした。
ずっと離れていたとはいえ双子の兄弟の死は蒼に確実に影響を与えていたと思うのですが、この作品には全体を通して"回想シーン"というのがほとんどないので、その後流くんが出てくることがないのが残念。
ただ、回想シーンがないというのは、ただひたすら現実を描写しているというところで、この作品の良いところだと思います。
実際、蒼は過去を振り返っている場合ではなかったでしょうしね。
最後の蒼の顔には思わず泣けましたね。
笑顔ではなく、悲しそうでもあり…でも優しくて、
今まで辛い思いしてきたんだから、本当に幸せになってくれ…!
そして羽澄ちゃん早く目覚めてあげて…!
綺麗な形で完結はしているのですが、キャラクターが素敵なだけに、
本当に、もう数ページでもいいから続きが読みたい!というところです。